割り込みライブレビュー!

*World Beat 2008 @日比谷野外音楽堂

ワールドミュージック系アーティストの日本でのブッキングといえばお馴染みのPlankton(http://www.plankton.co.jp/)主催の同イベントは、二年前の開催以来の二回目となるフェスであったが、世界中から人種も国境も越えるようなアツいビートを持ったアーティスト達が今年も出演した。このイベントは、Summer Sonicさながら関東と関西の二会場開催で、5日土曜日には大阪の河内長野市 ラブリーホールで公演され、海外からの二組の他に日本からはex.NumberGirl向井秀徳率いる日本の最強バンドZAZEN BOYSが出演した(見たかった!)そして6日日曜日、関東では日比谷野外音楽堂で日本からは、超巨大アングラ音楽集団、渋さ知らズオーケストラが出演。
海外から今回のWorld Beatにやってきたのはこの2バンド!

イスラエル/ニューヨークから、BALKAN BEAT BOX

イスラエル出身でニューヨークを拠点に活動を行っていたOri KaplanとTamir Muskatが中心となりNYのBrooklynでこの二人が出会い結成。前身バンドは二人がそれぞれ所属していたGogol BordelloとFirewater。ジプシー、クレズマー、アラブ、トルコ、ブルガリアン・ヴォイスなど様々なバルカン音楽、とDJ/サンプリング・カルチャーの音楽(ヒップホップ、ラップ、レゲエ/ダブ)などを混ぜ合わせた音楽性が特徴的である。すでに世界中のフェスに引っ張りだこのBBBであるが、ライブの定評が高い。2005年にファーストアルバム『Balkan Beat Box』を、2007年にセカンド『Nu Med』をリリース。両アルバムともに要チェックである。因にセカンドのタイトル"Nu Med"というのは、New Meditarranean(新しい地中海)という意味でまさに中近東でニューウェイブな音楽を作り出したこのバンドにふさわしいタイトルである。

Balkan Beat Box (Dig)

Balkan Beat Box (Dig)

Nu Med (Dig)

Nu Med (Dig)


ベルギー/モロッコからは、Think Of One

1996年にベルギーのアントワープでDavid Bove(ギター・ボーカル)が中心となり結成された。Think Of Oneの最大の特徴といえば、ジプシーさながらに世界中を演奏して回りながら所々の国々で仲良くなったミュージシャン達と次々とコラボレートしながら新しい音楽を作っていくというなんとも斬新なバンドなのである。その音楽性たるや言うまでもなく一言では表せないが、ブラス・サウンド、パンクのエナジー、ジャズの実験性、ファンクなベースライン・・・などに、ジプシーブラスやクレズマー音楽、ジャズ、レゲエ、ラテン、アフリカなどあらゆる音楽の要素を混ぜ合わせたゴッタ煮サウンドを聴かせる。このDavid Boveという人はキャンピング・カーで世界中を旅をして回りながら、これまでにアフロ・ブラジリアンのパーカッショニストやらイヌイット喉歌歌手などとコラボレートしているが、最も頻繁にレコーディングを行う目的地はモロッコであり、今回もモロッコの一座Camping Shaabiを引き連れての来日である。北アフリカパフォーマーをフィーチャーし、その名前はベルベル人の伝統音楽からとられている。同名のアルバムも今年2月にリリース。陶酔サイケデリックに夢中になること間違い無し!

Camping Shaabi (Dig)

Camping Shaabi (Dig)



というもの凄いエキセントリックな音楽集団を集めての野外フェスであった。出演は3バンドだけれども、まさにワールド・ビートの名にふさわしく世界中のビートの詰まったステージである。これだけの音楽性の融合を日本で、同じ会場で見られるなんてなんと素晴らしいことなんだ!
天候は良好すぎて七月の頭にしては暑すぎる程の気温が夏フェス日和。4時開演の30分前に会場入りするとまだまだ人はまばらな感じである。物販を覗くとplanktonからのリリースアーティスト達のCDや出演アーティストのグッズが販売されており、さっそくBalkan Beat Boxのタンクトップを購入。BBBとThink of Oneの単独チケットも会場で購入できるようになっていた。

4時開演。
オープニングは、日本が誇る大所帯パフォーマンス音楽集団渋さ知らズオーケストラの登場である。リハーサル時点から会場を楽しませてくれていた彼らであるが、本番の幕が開けると圧倒的な音世界に飲み込まれる。野音は座席があるのだが、演奏が始まったとたんにオーディエンスは総立ちでそのパフォーマンスを見入る。渋さ知らズはやはり迫力ある演奏はもちろんのこと視覚的にも非常に楽しめるパフォーマー集団であると再認識。ステージに前身白塗りのクリス・カニンガムのPVにでも出てきそうな奇天烈な男女四人と、でかいしゃもじを背負った人とセクシーダンサーズが登場すると一気に会場は渋さの世界に入り込む。グラストンベリーや例年のフジロック出演などステージ経験も豊富な彼らのパフォーマンスはさすがである。圧巻。強烈なユニゾンとスカのリズムが最高で会場をオープニングから踊り狂わせた。そんな彼らは翌日から海外公演のため、カナダのケベック州に飛ぶ模様である。世界でも活躍する日本のアンダーグラウンド代表選手を陰ながら応援して行きたい。

続いての登場は、ベルギー/モロッコからのThink Of One with Camping Shaabiである。遠目から見てもモロッコからのフィーチャリングアーティストの北アフリカ系の女性二人がまず目を引く。最初はテンポは早くないが、怪しげな雰囲気の音と独特のリズムが会場を包む。殆どの曲はベルベル音楽に特徴的な8分の12拍子から始まり、それが変則してR&Bやパンクのようなリズムに展開するのが面白い。もうオーディエンスはこうなると席にはとどまっておれず、通路に出て踊ったり野外トランス状態である。音だけで人を酔わせるというのは大変なことである。まさに合法ドラッグ
サイケデリックという印象ももちろんあるのだが、やはり使っている楽器なども元々はロック、ジャズ、スカといった典型的な編成であり、演奏を聞く限りではわたしにはロックの要素が予想以上に強いなという印象だった。モロッコ音楽には個人的にはあまり馴染みはないが、かつてレッド・ツェッペリンやジミヘンなどもモロッコのグナワ音楽にハマっていたことを思い出した。モロッコと言われるととっつきにくい感じもあるが、実はロックとは密接に歴史的にも関係の強い音楽だったのだ。それをより現代的なロック、ヒッピホップなどに融合させた感じ。サイケデリックな要素と共に高度な西洋的な要素も強く感じた。

そしてトリは私個人も最もライブを楽しみにしていたイスラエル/NYからBALKAN BEAT BOXの登場である。ボーカルのトマー・ヨーゼフは期待どおりの鶏の鶏冠モヒカン!実は意外にも初来日のBalkan Beat Boxだが、すでに日本でもファンは多いだろう。会場も一番の人入りと盛り上がりを見せた。リズムとビートが圧倒的である。会場の空気を一瞬にしてもっていくキレのいい癖になるリズム、力強いトマーのボーカル、様々な要素の融合したしかしそこに筋道の通った統一感のあるサウンドで観客を魅了する。サンプラーを使った打ち込みも多様しており、最先端のサンプリングカルチャーにジプシー、クレズマー、アラブ・・・と様々な音楽的要素が見え隠れする。トマーのボーカルを聞いているとそれはインドのバングラやパンジャビMCなんかにも通じるような要素も感じる。これだけいろいろな要素が入っているのにどうして大御所ロックバンドのような安定していて迫力があって力強く会場を煽るステージが見せられるのだ。このバンドは本当にとんでもない。そう感じてしまうステージであった。今回見られなかった人達は是非今週火曜日の単独公演を見に行ってほしい。

BBB演奏後の出演バンド全員による大セッションも凄いものであった。あれだけの大所帯でしかもこんなに個性的なバンド達が一斉に会すのだから当然である。というわけでWorld Beat 2008は大盛り上がりの中幕を閉じた。


(Report: Sayuri Arai)


そして、これを見逃してしまった人達のためにまだチャンスはあります!!
Think Of OneとBalkan Beat Boxの単独公演が今週予定されています。詳細をチェックしてくださいね!



Balkan Beat Box 単独公演
7/8(火)渋谷 DUO music exchange
18:00開場 19:00開演 自由5,500円(1ドリンク別・税込)
発売中:プランクトン当日清算、チケットぴあ、e+


Think Of One With Camping Shaabi 単独公演
7/9(水)渋谷 DUO music exchange
18:00開場 19:00開演 自由5,500円(1ドリンク別・税込)
発売中:プランクトン当日清算、チケットぴあ、e+